§ iTMS-J開始記念:音楽配信事業、雑感。

ついに日本の音楽業界に風穴を開けてくれたアップル - CNET Japan
アップルの日本版iTMS好調、サービス開始から4日で100万曲を販売 - nikkeibp.jp - 注目のニュース
Kazuho Oku's blog:日本の音楽配信市場は焼け野原?

参考:iTunes Music Storeと国内の音楽配信サービスを徹底比較!

iTMS-Jについていろいろ書こうと思っていたら、同業の先行サービスへの愚痴になったので別建てすることに。

とりあえず、一言。

SMEなんて大キライだ。

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恐らく、Appleとしてはもっと早い段階でiTMS-Jを展開したかったのだと思うが、現実は本家から2年4ヶ月遅れで始動。そのあたりの事情はこれまでに何度か触れてきたので詳細は省くが、要するに音源を握ってるレコード屋がごねまくったせいだ。

それでも数々の難問を解決し、いぢわるなレコード屋のいぢめをスルーして、「100万曲、(ほぼ全曲)150円」を実現したのはまさにGJだと思う。何せ、iTMS-Jが開始されるまでの最大手であったレーベルゲートのラインアップがたったの20万曲だったわけで、iTMS-Jは立ち上がった瞬間に配信規模では「業界最大手」になったわけだ。恐らく、今後も順調に配信曲数を増やしていくだろうから、iTMS-Jがこの業界のリーディング・カンパニーになることはほぼ間違いない。

「iTunes - iPod - iTMS」というiTunesソリューションのミッシング・リンクが埋められたことで、日本の消費者もiTunesソリューションの真価を体験することができるようになった。とりあえず、まともな音楽ライフを楽しむための最低限の環境が整ったと言っていいと思う。

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で。iTMS-Jは予想通りの快進撃を見せ、オープン4日目にして100万曲を販売、と。凄いことだが、予想通り。iTMS-Jはそれくらいやれるポテンシャルを持ってると思う。しかし、それをきっちり達成するあたり、如何に多くの音楽ファンがiTMS-Jを待ち望んでいたかがわかる。

ちなみに、大方の予想通り、iTMS-Jがオープンすると同時に先行サービスが一斉にディスカウント。しかし、この値下げ。まさに安易としか言いようがない。このあからさまにiTMS-Jに対抗した値づけは「そんなに簡単に価格を下げられるなら、最初からその価格で販売すればいいのに」というかなりネガティヴな感情を消費者に残すだけで、はっきりいってメリットが少ない。

以前書いたが、iPod-iTunes関連のAppleのビジネスは、基本的にiPodというハードウェアの売上げに支えられているのであって、iTMS単体では本当に微々たる利益しか出していない。iTMSがあの値づけでやっていけるのは、現状のiTMSはiPodを販促するための「強力なオマケ」として位置づけられているからだ。そして、その目的を明確に自覚していたが故に、99セントという絶妙な値づけによって、iTMSというサービスを消費者の間に定着させ、さらにiPodの売上げに結びつけるというポジティヴ・スパイラルを生み出した。このあたりのAppleの読みは恐ろしいほど冴え渡っている。

一方、日本の先行サービスは、基本的にハードウェアを持っていない。(まぁ、sonyが例外といえば例外だが。)したがって、そんな彼らが価格面でiTMSに追従したところで勝算はない。もともと、AppleのiTunesソリューションを支えるトライアングルのうち、iTunesとiPodという二角が欠けているのだ。普通に考えたら、勝負になるはずがない。

では、なぜ彼らはこんなバカみたいなディスカントをしてでもiTMS-Jに対抗したのか。

あくまでも妄想であるが、ここで考えられるほぼ唯一の理由は「全曲強制買い直しスキーム」だ。

制限のキツイDRMでユーザを縛り上げ、一定期間で強制的に音楽データを無価値にし、恒久的にデータを買い直させる。そうすれば、ほぼ2、3年周期で同じユーザが同じデータを買い続けることになるので、データ販売だけでもビジネスとして成立するんじゃないの、という理屈だ。

iTMS-Jに先行していた日本の音楽配信サービスが採用しているDRMは、OpenMG、または、Windows Media 系DRM(Windows Media Digital Rights Management、Windows Media Technology)である。このDRMの最大の特徴は、楽曲は基本的に購入したPCでのみ再生が可能ということ。つまり、データを買ったPCでしか再生できないので、PCが逝ってしまったらそれまでよ、というまことに腹立たしい仕様になっている。

つまり、OpenMGとWindows Media DRM陣営の暗黙のメッセージとしては、「聴きたかったら、全曲買い直せ」ということなのだ。

年間2、3曲しか買わない人であればこれでも我慢できるのかもしれないが、年間数十枚のペースで音楽CDを購入する私のような消費者はどう考えても納得できないだろう。もう、あり得ないと言ってもいい。何度もトライしてみたが、バックアップできないデータを有料で買わされる状態には決して馴染むことができなかった。

PCは2、3年もすると確実に何かしらのトラブルを抱えるし、5年もすれば商品ラインアップが完全に一新され、イノベーションによって登場する新しい規格が浸透し、どうしてもPCを買い替えなければならない状況が訪れる。もしかすると、iTMS-Jに先行していた日本の音楽配信サービスは、PCを「耐久消費財」と勘違いしているのかもしれないけど、この状況を見越した上で、上記のような仕様を策定したとしか考えられない。

つまり、OpenMG、Windows Media DRM陣営の業者にとって、音楽データは単なる「情報」であって「資産」ではない、という認識なのだ。一方、AppleのFairPlayは音楽データをユーザの資産と見なし、その保全と運用に対する、現実的かつ実効のある配慮が見られる。

それは、「音楽」がユーザとクリエイターの双方にとって音楽が重要な文化であるということを、Appleが認識していることをあらわしていると思う。ビジネスの結果として音楽データがコモディティ化してしまうのは仕方ないと思う。しかし、それははじめから音楽を「使い捨て情報」として売るということとは事情が違うだろう。結局、彼らは音楽を大切には思っていないのだ。

それは、とても悲しいことだと思う。

Posted by tomo at August 5, 2005 7:28 PM | ESSAY | TrackBack |

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