メルマガ「週刊ビジスタニュース」:切込隊長・山本一郎の最新ニュースを斬る!:◇◆国際大学でニッポン放送問題について語ってきた◇◆
結論は表題のとおり。インターネットと放送は共存するのであって、インターネットが放送の代わりになれるわけではない。
もしインターネットが放送を飲み込むとしても、それはもっとずーーーーーーーっと遠い未来になると思う。
ビジスタが来てたので例によって隊長のコラムを斜め読み。最近2chの粘着くんに必死にラブコールされている隊長、どうやら国際大学で講演してきた模様。肝心のお題はレイテストなホリエモン騒動であるニッポン放送問題だったそうな。
で、興味を持ったのはココ。
テレビがネットに置き換わる前提で話が進む向きが強く、来年再来年にもテレビがダメになるような考えが一部で存在していることが驚きであった。
この部分を読んで久しぶりに懐かしい気分になった。…思い起こせば西暦2000年。時代は第一次ブロードバンド・バブル。ついでに、ITバブルのど真ん中。変なヤツが大挙してIT業界に紛れ込んでいた頃。(笑)
xDSLもぜーんぜん普及しておらず、光を敷きたいが部材の生産が追いつかず調達までに「3年待ち」とかいわれて遠い目になっていた当時、10Mで垂れ流す映画をパソコン(それもWindowsMeが乗ってた…)で見せようとしていたのだけど。
結果は、当初の予想通り、問題山積。一般向けの本サービスなんてムリムリという状態。最初からムリだって言い続けてきたのに聞く耳を持たない、欲ボケしたシブヤ系の大きいおともだちからはずいぶんと白い目で見られたものだ。それでも、当時のエロい人たちは会員数やサービスを限定しつつ本サービスに持ち込みたかったようで、無理矢理サービスインする方法を考えていた模様。
当時浮かび上がった問題点をざっくりと書いてみる。まず、OS(Windows Me)が10Mのストリーミングに耐えられなかった。まぁ、始める前からわかっていたのだが、Windows2000じゃないと10分以上視聴するのはムリぽかった。で、次の問題も予想どおりだが、サーバがもたない。実験だったのでアクセス数はコントロールできたのでなんとかなったのだが、そこで計測されたパフォーマンスだと、10Mのストリーミングで同時アクセス5,000程度をさばけるようなシステムを導入する費用は当時でも非現実的な額になった。さらに帯域の消費量がハンパではなかった。もしこれをインターネットでやったら、日本のバックボーンをあっという間に食い尽くすのは目に見えていた。(まぁ、これに関してはもともとインターネットではムリというコンセンサスは得られていたのだけど。)
というわけで、当時いろんなひとが夢見ていたVODのようなサービスは「インターネット経由ではムリ!」という予定通りの現実的な結論に落ち着いていた。少なくとも技術面ではそのようなコンセンサスが既に形成されていた。まぁ、それでも放置したら技術的な進展もないわけで、たくさんの人柱を踏み越えて現在に至る、と。
で、今のステータスはどうかというと、ADSL等のテクノロジを利用しつつ、単に力業で帯域を確保して転送料を増やした、という状況。結局、根本的な問題は何も解決していない。帯域消費とサーバ負荷の軽減という問題を抜本的に解決する方法自体が提示されていないので、まさに、これ以上どーしようもないという状態。
さて、ここでやっとインターネットと放送の問題へ戻る。
今まで説明してきた通り、現在のインターネットのアーキテクチャでストリーミングを行った時、放送が対応しているような人数(100万とか1,000万とかいう単位)のユーザをさばくには、さらなる力業で帯域を確保し転送量を増やすという方法以外に根本的な解決方法がない。つまり、(今のところ)現実的には不可能ということになる。それ以前に「おまいら、パソコンでTV見るんですか?」というデバイスとライフスタイルの問題があり、なかなか奥が深い問題だ。
そんなわけで、一部の人々にみられる「来年再来年にもテレビがダメになる」という誤解は、当面、妄想のまま終了ということになる。隊長が例示してたけど、フットボールの中継みたいに多くの人が同時視聴するようなコンテンツの配信は、やはり「放送」のほうがふさわしい。また、映画みたいに複数の人数で視聴するリニアなコンテンツは、TV受像機のようにユーザとの間に一定の距離をおくようなタイプのデバイスのほうがリビングに馴染みやすい。
地上波がデジタル化されてある程度のインタラクティヴ性が放送に導入されるとしても、その傾向は大きく変わらないと思う。リニアであることが好まれるコンテンツにインタラクティヴ性は必ずしも必須ではない。それが必要とされないのであれば、コンテンツをネットワークに接続する意義は薄まる。
では、視聴者参加型プログラムは除外するとして、放送においてインタラクティヴ性がより強く求められるのはどんな場面だろうか。それを知るには、現在のインターネットにおいてインタラクティヴ性が強く求められる場面を考える必要がある。
インターネットがギークやナードたちのオモチャだった頃は、コンテンツ自体のインタラクティヴ性が重視されていた。誤解を恐れずにザクッと括ると、昔のインターネットに見られたエンタテインメント系コンテンツの多くはネットワークにおけるアートムーブメントのような流行に影響されて生まれたものが多い。要するにネットワーク上で展開されたインスタレーションとしての性質が強かった。
そんな時代を経て現在のインターネットは当時とは全く異なるフェイズに突入している。帯域の拡大と端末の発達などのによって、さまざまな局面でビデオが多用されるに至って、これまで無駄に重視されていたインタラクティヴな仕掛けは必要最小限に止められる傾向が強くなった。通信を必要としないコンテンツでは、どちらかというとコンテンツをリニアに見せ(読ませ)ようとするケースが増えてきた。ランダム性を抑えて意図した順序と形式にユーザを導き、コンテンツに集中させようという意図が重視されるようになったと言えるかもしれない。
このようなコンテンツの傾向とは逆に、広告やECではインタラクティヴ性がより強く求められるようになっている。一言でインタラクティヴ性といってもそのあらわれ方はかなり多様だ。ゲーム性の強いバナー広告のようなカタチもあれば、放送用のCFや雑誌広告と連動した広告コンテンツによって異なるメディア間を繋ぐことで生まれるインタラクティヴ性もある。また、ユーザが閲覧しているページのコンテンツに連動した広告を引くキーワード広告や、ユーザの行動をトレースすることで読み取れるコンテクストから商品をリコメンドするようなインタラクティヴ性のあらわれ方もある。
つまり、通信が必須となるコンテンツ(チャット、ゲーム…etc.)以外だと、広告やECにこそインタラクティヴ性がより強く求められる傾向にある。この延長上で、TVショッピングのような商品の販売を目的とする放送用コンテンツがネットワークと接続されてインタラクティヴ性が高まる可能性は高い。しかしそれでも放送用コンテンツのすべてがネットワークを経由しなければならない理由にはならない。
よく言われることだが、TVができてもラジオや映画はなくならなかった。それと同じように、インターネットが普及しても放送が不要になるような事態は、Webのアーキテクチャがドラスティクなブレイクスルーを迎えるまではやって来ない。しかし、今後も放送が消費者に対して最も影響力のあるメディアでありつづけかというと、(今はそうかもしれないが)今後は違ってくるような気がする。
現在放送向けの広告に突っ込まれている資金がインターネット向けの広告に向けられるようになれば、インターネット上のコンテンツがさらに活性化し、放送と通信という違いを超えてそれぞれの広告が連携し相互補完を行う必然性が高まる。そんな感じで、徐々にではあるが広告のメインストリームが放送からインターネットにシフトしてゆく傾向は今後も続くと思う。
ホリエモンが逝っていた「テレビとネットの融合」てのは現実的にはこんな感じに収まるわけで、それほどラディカルには見えない。でも、もしかすると放送業界のおぢさんたちはそれさえも許容できないのかもしれない。そのへんの事情は知らないけどね。
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追記(July 21):
後づけの参考諸々。
参考:R30::マーケティング社会時評:テレビ番組のアフィリエイト、何で誰もやらないの?
ネットは新聞を殺すのかblog:求められているのはネット配信じゃなくてオンデマンド
…Tivoがやっているような、システム側が視聴者の嗜好を理解してくれて、使えば使うほど好みの番組を推薦してくれるような仕組みもある。そこまで便利になって初めて、ネット配信はテレビ放送を超えるのではないか。…
リコメンド・システムは現状ママで作れる。しかし、肝心の配信方法に決め手がない。現状だと、そのレベルのサービスをインターネットで展開するのは無理。とりあえず、閉じた専用ネットワークを構築することを考えないといけない。
そんなわけで、もっとも有望なのはCATV各社。あそこがオンデマンド・サービスを展開する気があるなら、比較的短期間で実現できるだろう。なんと言っても、専用線持っている上に、配信規模が限られているから、インフラの投資額もかなり正確に算出できる。
さらに…、
…個人的には配信時のインフラの安定性が高く求められるストリーミング配信よりは、非同期で再生できるダウンロード型配信の方が有望だと思っています…
まさに。現状だとこれしかないでしょう。
そんなわけで、CATV各社のどこかがダウンロード型のオンデマンド・サービスを始める、というのが最も現実的な予想。ついでに言うと、映像配信以外のサービス提供はインターネットで行うのが吉。(そのほうが便利なので。)
つまり、インターネットと専用ネットワークの合わせ技を用いることを考えるのが最も現実的な予想、と。
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